CA藤田晋氏の大ヒット本「渋谷ではたらく社長の告白」が今更ながら面白すぎた件
ー少年よ大志を抱け。
誰しもが耳にしたことがあるであろう、クラーク博士が残した言葉である。
そしてそれは、ある日本の有名な経営者が好んでいた言葉でもあった。
その男こそが、サイバーエージェント代表取締役社長の藤田晋氏だ。(以下藤田氏)
藤田氏と言えば、元ライブドア堀江貴文氏、USEN・U-NEXT宇野康秀氏、楽天三木谷氏、GMO熊谷正寿などと並ぶ、インターネット黎明期を支えた著名なIT経営者である。
彼が立ち上げたサイバーエージェントは、インターネット広告やメディア事業、ゲーム事業などを主軸としている。
有名なサービスとしてAbemaTVやAmebaなどが挙げられる。
最近ではグループ会社であるCygamesから生まれた「ウマ娘」がスマッシュヒットしており、ますます勢いを増すばかりである。
直近の決算における売上高は「4195億円」にも到達している大企業だ。
そこまで会社を大きく成長させた藤田氏の経歴はいったいどのようなものなのだろうか?
それを赤裸々につづっているのが、本記事で紹介する「渋谷ではたらく社長の告白」である。
私は昔から、起業家の自伝や告白本を読むのが大好きだ。
実際に生き抜いてきた現実から滲み出る血の匂い、泥臭さ、狂気、友情、ドラマ性、人間の醜悪さなどなど・・・。
そこには、その人の人生にしかないオリジナリティのある物語があり、溢れんばかりの熱量がある。
本記事で紹介する「渋谷ではたらく社長の告白」には学ぶべき点がたくさんある。
そこで今回は「起業を志す人」に絞って、3つのポイントを紹介したい。
■こんな方にオススメ!
・将来起業をしようと考えている人
・起業したいとは思っているけど、何から始めたらいいか分からない人
・起業をしたものの、成果が出ずに悩んでいる人
・一度きりの人生を思いっきり楽しみたい人
- 〇「渋谷ではたらく社長の告白」の概要
- 〇仕事でずば抜けた成果を出し、大きな武器を得ること
- 〇夢を夢で終わらせない行動力
- 〇「仲間」集めの重要性
- 〇金持ちになりてぇんだよ!と思った時にすべき手順のまとめ
〇「渋谷ではたらく社長の告白」の概要
【概要】
著者:藤田晋
出版社:(株)幻冬舎
出版年月日:2005/3/31
ページ数:308p
二一世紀を代表する会社を作りたい――。高校生のときに抱いた起業の夢は、サイバーエージェントの設立により実現した。しかし、社長になった彼を待っていたのは、厳しい現実だった。ITバブルの崩壊、買収の危機、社内外からの激しい突き上げ……。孤独と絶望、そして成功のすべてを赤裸々に告白したノンフィクション。夢を追う人必読の書。
同書は、藤田氏の幼少時代から、ベンチャー企業で働いていた大学時代、新卒入社後のベンチャー勤務時代、そして起業~起業後の会社の設立から成長までを描いた自伝本である。
現代の日本においても、未だ起業という文化はそこまで広く根付いてはいない。
従って、経営者は自分とは別世界の人間のように感じてしまう。(実際それもそうだが)
同書においては、経営者である藤田氏の心境が非常に生々しく描写されている。
キラキラとした側面が取り上げられがちなのが経営者であるが、この本の場合はむしろ逆といっても過言ではないだろう。
会社を経営している中での浮き沈み、気分が高揚することもあれば、株価が急落し、バッシングに晒され、絶望することもある。
藤田氏のジェットコースターのようなスリリングな人生が、彼の高い言語化能力によってつぶさに心境が描写されている。
平凡な人生を過ごすことに対する嫌悪感があり、何者かになることに焦がれていた藤田氏は、いかなる逆境にもめげることなく躍進を続けた。
〇仕事でずば抜けた成果を出し、大きな武器を得ること
藤田氏は元々、営業マン出身である。
大学時代には(株)オックスプランニングセンター、新卒ではインテリジェンスという会社に就職。
両社において藤田氏は、凄まじいハードワークを自らの意思で率先してこなした。
当時20歳。
オックスプランニングセンターにおいては、これから創刊するフリーペーパーの広告営業の仕事から始めた。
(前略)その間私はとても学生バイトと思えないほど一生懸命仕事に打ち込んでいました。夏の暑い日に、毎日外で100件近くの飛び込み営業をするのです。
働き方改革の風潮が強まってきたこともあって、ハードワークに対する後ろ向きな意見が目立ってきた昨今であるが、もし仕事で大きな成果を出し、人より多くお金を稼ぎたいのなら、当然ながら他人より働かなくてはならないだろう。
お金を稼ぐための能力やスキルを培うためには、実践を重ねるほかないからだ。
そして新卒でインテリジェンスに入社してからも、彼は必死に働いた。
自分の目標ははっきりしています。「将来21世紀を代表する会社をつくること。」それに向けてできるかぎり早く、実績を積み上げていかなくてはなりません。
私は最初から毎日終電ぎりぎりまで働きました。土日も当然のように仕事をしていました。
社会における価値は、絶対的なものと、相対的なものの2種類が存在する。
前者は主にクリエイティブな仕事が、それに当てはまる。
例えばミュージシャンが作る音楽は、その人特有の歌声や、その人にしか作れないメロディや独特な世界観がある。
後者の場合は、営業マンや広告ディレクター、エンジニアなど広い職業に該当する。
ある二人の営業マンが居たとして、営業成績が高い人のほうが、市場価値は高くなる。
広告ディレクターの場合であれば、より宣伝効果の高い広告を生み出せる人の方が、市場価値は高くなる。
市場価値が高ければ、その分マーケットは高いお金を支払うし、仕事も集まりやすい。
企業は特定のマーケットにおいて競争しあうし、さながら陣取り合戦のようである。
当然、価値が高い企業が大きくパイを独占することが出来る。
藤田氏は、競争性の高い会社を立ち上げるべく、まず自らのビジネスマンとしての能力をほぼ全ての時間を費やして磨いたのだ。
従ってこれから起業を志す者は、まず今ある仕事でとび抜けた実績を得ることが第一歩であろう。
実績やスキルがあれば、仕事を得ることも相対的に優位な立場につくことができるし、お金も多く稼ぐことが出来る。
そして藤田氏は、会社員時代に培った実績や営業スキルに(食べていけるだけのお金を稼げるという)自信があったからこそ、起業に踏み切ることが出来たのだ。
■To do アクション
✓本業で大きな成果を出すという意思を固める
✓仕事に割く時間を出来る限り増やす
✓どうすれば更に成長できるか?という視点を常に忘れない
〇夢を夢で終わらせない行動力
誰しもが皆、何らかの夢を抱いているはずだ。
しかしチャレンジ精神が広く浸透していない日本では、やはり挑戦することをためらう人が少なくない。
レールから外れることに対する世間の風当たりは、依然として厳しい。
とはいえ、行き場のない情熱を抱えた若者も多数存在する。
「とにかく有名になりたい。」
「とにかく社長になりたい。」
「お金持ちになりたい。」
…こうした願望は普遍的でごく自然なものである。
藤田氏も、元々はそんなどこにでもいるような若者の一人であった。
作家、ミュージシャン、とにかく憧れの職業について、一度しかない人生を送りたいと考えていたので、何でも良かったのです。
彼は中高時代バンド活動に明け暮れていたこともあって、ミュージシャンを志望していた。
しかし自分には音楽の才能がないと見切りをつけ、同じ音楽仲間だった友人に「レコード会社を作ってデビューさせる」ことを約束したことをきっかけに、起業家を志すようになった。
その根底には「平凡な人生」で終わらせたくないという気持ちが強くあった。
…とは言ったものの、我々はまず何から始めれば良いのだろうか?
お金持ちになりたい、有名になりたいという願望は抽象的であって、具体的なプロセスを描きにくい。
では藤田氏のファーストステップは何だったのだろうか。
私は頭の中でイメージしてみました。起業家、社長、スーツを着て革張りの椅子に座っている人…。
そうだ、とりあえずスーツを着る仕事をしよう。
そんなわけで、私が選択した最初の行動は、新しいスーツと「フロムエー」を買いに行くことだったのです。
大学二年生で20歳の頃に彼がまず取った行動は、スーツを着る仕事を探すこと。
そしてその後の働きっぷりは、前述したとおり猛烈なものであった。
彼が起業家に向けて歩んだ第一歩は、ごくありふれた普通のものであった。
(※いわんやその後の働き方が凄まじいが・・・。)
現代における多くの若者が持つ悩みは、「やりたいことが分からない」というもの。
Youtuberやインフルエンサーなど「好きなことでお金を稼いでいる(ように見える)。」の出現により、いつしか好きなことを見つけなきゃいけないという義務感と焦燥感が生まれるようになったのではないだろうか。
しかし頭でウンウンと「自分の好きなこと」を探していても、実は見つけるのが難しい。
ビジネスに結びつけるとなると、なおさらのことだ。
だからまずは何でもいいから「仕事」を始めてみることが不可欠だ。
色々な仕事をやっていくうちに、次第に夢中になっていくだろうし、一定期間やってみて楽しめないのであれば、途中でやめても構わない。
ただし中途半端にやってみても、大した成果も得られないし、仕事の楽しさも分からないだろう。
なので短く期間を定めて、集中してその仕事に取り組んだ方が良い。
仕事を始めたばかりでへこたれてなんかいたら、到底経営者になんてなれない…。
(中略)そんな一生懸命な私を見て、徐々に会社はほかの仕事も任せてくれるようになりました。
スクール情報誌の広告営業に専門学校や英会話学校に行ったり(後略)
つまり藤田氏の場合は、
①起業家になるという熱い夢があった
②その夢を実現させるために、まずは仕事を始めた
③その仕事で成果を出すことに全力で努めた
④会社に評価され、別の仕事も任せてもらえるようになった
⑤更にやりがいを感じるようになり、モチベアップ
⑥高いモチベを伴って働いているので、更にスキルアップ
このようなプロセスを経ている。
起業家に必要な実務スキルを得るために、業界問わず、まずはキャリアをスタートさせた。
「夢」とは往々にして、途方もない目標のように感じられてしまうものだ。
しかし実際は一歩一歩、階段を登っていくようなもの。
まずは踏み出してみない限り、階段を登った先にある目標にはたどりつけない。
従って、目標である入り口にまずは立つことが何より重要だ。
お金持ちになりたいのであれば、まずは仕事を始める。
そして仕事に一生懸命打ち込んで、実績を積めばいい。
有名になりたいのであれば、まずはSNSやYoutubeで発信を始める。
そしてどうすればアクセス数を稼げるか、どういうコンテンツがウケるかを考えながら取り組めばよい。
〇「仲間」集めの重要性
フリーランスとして働くならともかく、会社を運営していくためには、組織を形成しなくてはならない。
当然人が必要だ。
起業の重要ポイントの一つが、「仲間集め」だと言われる。
共に事業を運営していくパートナーはスキルであったり、目指すビジョンの方向性に共感できるかどうか、人間性の相性など様々な要素が問われる。
藤田氏の場合は、会社の同期一人と、オックスプランニングセンター時代の後輩の3人で会社をスタートさせた。
それが現サイバーエージェント取締役兼執行役員副社長である日高裕介氏と、サノウ株式会社代表取締役社長の石川篤氏である。
両名共に、立ち上げ期のサイバーエージェントを支え、寝る間を惜しんで会社に寝泊まりしながらひたすら働き続けたという。
何事も一人でできることには限界がある。
協力者が居るからこそ、どんな物事も早く進めていくことが出来る。
仕事における仲間を見つける上で、重要なのは「その人の人柄やスキル」だろう。
会社を立ち上げて間もない頃、藤田氏は率先して採用活動に注力をしていた。
会社を立ち上げた初年度から新卒採用をはじめ、当時の大学四年生に片っ端からメールを送っていったという。
藤田氏が、採用活動に注力していたのにはある理由があった。
それは彼が勤めていたインテリジェンス時代にさかのぼる。
自分がインテリジェンスに入社したとき、この会社が急成長を遂げているのが不思議でした。当時伸びていた人材派遣業のサービス内容は、他社との差別化は一切なかったからです。
それでも後者にも拘わらず他者をごぼう抜きにしています。(中略)インテリジェンスは採用に非常に力を入れているので、同業他社と比べて明らかに優秀な社員が入社し、その社員が非常に高い士気で頑張っているのです。(中略)採用力は、競争力だー。
インテリジェンスは、ビジネスモデルに優位性があったというよりは、社員そのものの能力によって、他社との競合に打ち勝っていたと分析する藤田氏。
そしてその経験を基に、ベンチャーの未来、インターネット業界の将来性などを熱く語ったのだ。
営業マンとして培ったプレゼン能力が、多くの就活生の心を動かしたのである。
〇金持ちになりてぇんだよ!と思った時にすべき手順のまとめ
あなたがもし、大きいことを成し遂げたいと思っているのなら、以下の手順を辿ろう。
①まず何らかの仕事を始める(在職中ならそれに必死で打ち込む)
②スキルを高める
③実績を残す
④お金を自分で稼げる(会社以外の仕事で)採算が取れたら独立
⑤ネットやそれまでに築いた人脈を伝って、仲間を集める
※仕事で有名になれば、人と知り合う機会も自然と増える。
…である。
成功者のやったことをそっくりそのままマネをしていても残念ながら意味はない。
こと事業に関しては、全くのパクリでは、独自性がないからだ。
そうではなくて、成功した手順の本質だけを抽出し、実行に移せばよいのだ。
元々はどこにいるでも若者だった藤田氏。
「渋谷ではたらく社長の告白」は、私たちが普段見過ごしがちな、夢や目標、願望などを強烈に掘り起こしてくれる一冊だ。
そして読後感がすさまじくアツい。
心がジンジンと燃えて、明日への活力がみなぎってくる。
夢をかなえたい人、熱中した人生を過ごしたい人、とにかく満足のいく人生を過ごしたい人、お金持ちになりたい人、女性にモテたい人、今の仕事が不満な人、人生に疲れた人…。
そんなすべてに捧ぐ一冊こそが、この本である。
ぜひ一度手に取ってみてほしい。
あなたの人生がきっと輝きだすだろう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。